サク……サク……
足音がやけに耳触りで…俺はただ無言のまま歩く。
こんなに足音立ててるなんか…忍者失格だってお前は笑うか?
いつもみたいに…柔かな笑顔で…。
ガキのころはなにもわからないまま。
ただ無邪気に笑いあってた。
時々…お前が不意に遠くを見つめるのに気付いてたのに…俺はそれを見ないふりをしていた。
それでも…俺達はなにも変わらないと…ずっとそう信じていた。
いつもアイツがいたその場所には…小さな…小さな石。
「…………」
くしゃくしゃになった紙を持って…じっとその石の前に立つ。
「………よっ」
昔と同じように言葉を出してみる…その声が震えた気がしたのは…たぶん俺の耳がおかしいから。
アイツがいつも座っていた場所の隣…久しぶりに腰掛けた。
ここに座るのはいつも俺で…。
ここに座るのはいつもヒナタで…。
ここに座るのはいつもシノで…。
でも、その隣にいるのはいつもお前だった…。
「明日からさぁ…任務なんだよなぁ。お前好みのすっげぇ任務!めっちゃくちゃ強いビンゴブックに乗ってる抜け忍倒しに行くんだぜ、俺とシノと2人で」
ワン。と赤丸が鳴いた。
喉奥で笑い、言葉を続ける。
「そ、後赤丸も一緒」
俺達の事だから楽勝だけどな。
笑いながら言葉を続ける。
なんでもない事がとり止めなく俺の口から出ていった。サスケ、今カカシと組んでるんだぜ?とか、紅センセがアスマセンセと結婚してたって知ってたか?とか…あぁ、俺の甥っ子がアカデミーに入学したんだ。とか……。
自分でもバカになるぐらい話しつづけてた…俺ってこんなに話し好きだったっけ。
木々は赤く色染まり…吹く風は冷たくって…
この森の中…声をだしてるのは俺独り……。
「…お前さぁ…なんでいっつもここにいるんだ?」
静かなそこは…無性に孤独さを感じさせる。
「なぁ……ナルト……」
横を見る…いつもお前がいたそこ。
……誰も…いない……。
「ナル……ト……」
「ナルト」
昔みたいにどうしたんだよって言えよ。
クルクルと表情を変えたり…不意に穏かな笑顔で空眺めたり…その合間に俺を視界に捕らえたりしろよ。
なぁ…なぁ…。
「なんでいないんだよ……」
なんでいないんだ。
なんで消えたんだ。
なんで…なんで…。
嫌だ
嫌だ…
嫌だ…嫌だ!
認めたくなかったんだ。
お前がいない事を。
今もここにいるって信じてたかったんだ。
「ナルト…ナルト……ナルト!!!!」
バカみたいにお前の名前だけ叫ぶから
煩いって笑いながら姿現せよ。
返事しろよ。
ナルト…ナルト………。
伝えられなかった思い。
伝えることのできなかった言葉。
なぁ…もしも…もしもだぜ?
俺がお前の事好きだって言ったら…お前はどんな顔をするんだろうな…。
絶対言えない言葉だけどさ………。
言えなかった言葉は…時間と共に濃くなって行き…。
俺は…お前に会えないままこうしてまた時を刻んで行く。
握り締めた紙の端が風に煽られ
カサカサと…カサカサと音を立てて行く。
好きなんだ…
誰よりも…お前だけ……