なぁ…もしも…もしもだぜ?
 俺がお前の事好きだって言ったら…お前はどんな顔をするんだろうな…。
 絶対言えない言葉だけどさ………。





    ダセナイ手紙




 伝える事なんか出来ないから…書にしたためてみようかって紙と筆をとってみる。
 真っ白な紙…。
 

『拝啓 ウズマキナルト様』

 そこまで書いて、手が止まった。

 アホくせぇ……。

 くぅん?と赤丸が不思議そうに俺を見上げたのがわかる。
「なんでもねぇよ……」
 くしゃっと赤丸の頭をなぜ、紙を丸める。
 出せない…いや、書けない手紙。
 口で伝える事もできないってのに…書いたって虚しいだけだしな。


 言えない言葉…。
 何度、言いそうになったか…お前わかってねぇだろ?
 たった独りであの森にいるのを見て、何度苦しい思いになったかなんてしらねぇだろ?
 目を細めて…お前の目と同じ青い空を柔らかい笑顔でみる横顔みながら…何度こっちみろって言いそうになったかなんて…わかってねェだろ?
『火影になる』
 まっすぐに迷いのない言葉をいうお前に…いつか置いていかれるんじゃないかって不安になったかなんて…お前は知るはずもない。

 知られても困るだけだったしな。
 俺も、お前も…。

「……いてぇな…」

 くぅん…

 呟きに同意するように赤丸がまた鳴いた。


 俺の気持ちをお前はしらない。
 俺の言葉を俺は伝える事なんか出来ない。

 独りで立っているお前を見て…。
 いつか倒れるんじゃないかって心配して…そんなわけねぇって自分を強引に納得させて…。
 火影になるって言葉、真剣に言ってるのわかって…その言葉を吐く回数だけお前は強くなって…。
 いつからなんだろうな…俺の中にお前が一杯になったのってさ…。
 でも、お前は知らない。

 柔かな笑顔だった。
 騒がしい笑顔だった。
 強い笑顔だった。
 自分のために泣く事を知らない奴。
 苦しくっても平気だって強がりを言う奴。

 沢山の人の中で…笑顔を浮かべてたった独りで立ってるって気がついたの…いつだっけ…。


 くしゃくしゃにした紙、広げて皺のばして
 もう1度…筆をとる。



『……好きなんだ……。
 誰よりも…お前だけ………』




 それだけ書いて、なんかブルーになった。
 俺って…情けねぇ…。


 なぁ…あの日…始めてあの森でお前見てから…どれだけ時間過ぎたと思う?
 俺は上忍になった。お前より早く。
 でも…俺はお前に敵わない。
 
『もしさ…俺が、里から狙われるようになったら…お前、どうする?』
 いつだったっけ…お前が俺に言った言葉。
 あのとき俺…なんて約束したんだっけ?

 ……あぁ…そっか…。

『里の奴より先に、俺がお前を狩るぜ?』

 …ご免…俺嘘つきだな……。

 

 立ち上がる。昔より随分大きくなった赤丸が歩きだした俺の横につく。
 静かに…歩いて行くのはもう随分の間行く事のなかったあの森……。


 そこはいつもと変わらないままそこにあって…。
 昔と変わらないまま俺を包みこんでくれた。

 サク……サク……

 足音がやけに耳触りで…俺はただ無言のまま歩く。
 こんなに足音立ててるなんか…忍者失格だってお前は笑うか?
 いつもみたいに…柔かな笑顔で…。



 ガキのころはなにもわからないまま。
 ただ無邪気に笑いあってた。
 時々…お前が不意に遠くを見つめるのに気付いてたのに…俺はそれを見ないふりをしていた。
 それでも…俺達はなにも変わらないと…ずっとそう信じていた。

 いつもアイツがいた森の奥の広場。
 
 昔と…何ら変わりのないそこ。

 でも…あいつは居ない。





 いつもアイツがいたその場所には…小さな…小さな石。






 

「…………」
 くしゃくしゃになった紙を持って…じっとその石の前に立つ。
 
「………よっ」
 昔と同じように言葉を出してみる…その声が震えた気がしたのは…たぶん俺の耳がおかしいから。
 アイツがいつも座っていた場所の隣…久しぶりに腰掛けた。
 ここに座るのはいつも俺で…。
 ここに座るのはいつもヒナタで…。
 ここに座るのはいつもシノで…。
 でも、その隣にいるのはいつもお前だった…。

「明日からさぁ…任務なんだよなぁ。お前好みのすっげぇ任務!めっちゃくちゃ強いビンゴブックに乗ってる抜け忍倒しに行くんだぜ、俺とシノと2人で」
 ワン。と赤丸が鳴いた。
 喉奥で笑い、言葉を続ける。
「そ、後赤丸も一緒」
 俺達の事だから楽勝だけどな。
 笑いながら言葉を続ける。
 なんでもない事がとり止めなく俺の口から出ていった。サスケ、今カカシと組んでるんだぜ?とか、紅センセがアスマセンセと結婚してたって知ってたか?とか…あぁ、俺の甥っ子がアカデミーに入学したんだ。とか……。
 自分でもバカになるぐらい話しつづけてた…俺ってこんなに話し好きだったっけ。




 木々は赤く色染まり…吹く風は冷たくって…
 この森の中…声をだしてるのは俺独り……。




「…お前さぁ…なんでいっつもここにいるんだ?」
 静かなそこは…無性に孤独さを感じさせる。
「なぁ……ナルト……」
 横を見る…いつもお前がいたそこ。

 ……誰も…いない……。



「ナル……ト……」



「ナルト」
 昔みたいにどうしたんだよって言えよ。
 クルクルと表情を変えたり…不意に穏かな笑顔で空眺めたり…その合間に俺を視界に捕らえたりしろよ。
 なぁ…なぁ…。
「なんでいないんだよ……」





 なんでいないんだ。

 なんで消えたんだ。

 なんで…なんで…。


 嫌だ

 嫌だ…

 嫌だ…嫌だ!



 認めたくなかったんだ。

 お前がいない事を。

 今もここにいるって信じてたかったんだ。




「ナルト…ナルト……ナルト!!!!」

 バカみたいにお前の名前だけ叫ぶから

 煩いって笑いながら姿現せよ。

 返事しろよ。

 ナルト…ナルト………。









 伝えられなかった思い。
 伝えることのできなかった言葉。




 なぁ…もしも…もしもだぜ?
 俺がお前の事好きだって言ったら…お前はどんな顔をするんだろうな…。
 絶対言えない言葉だけどさ………。



 言えなかった言葉は…時間と共に濃くなって行き…。
 俺は…お前に会えないままこうしてまた時を刻んで行く。

 握り締めた紙の端が風に煽られ
 カサカサと…カサカサと音を立てて行く。















 好きなんだ…
  誰よりも…お前だけ……



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